➀ 市場規模、差別化、既存サービスの問題点
▸ 市場のセグメント化: 施術所市場を右図の ようにゾーニングする。縦軸に技術⼒を取り、 横軸には施術料⾦を取った。右に⾏くほど施術 料⾦は⾼くなり、上に⾏くほど技術⼒が⾼い。 左下から時計廻りに、ゾーン I、II、III、IV と セグメント化する。そうすると、 ・ゾーン I:技術⼒はそれほどでもないが単価 が安く抑えられている層 ・ゾーン II:技術⼒が⾼い割には⽐較的単価が安い層(ゾーン I よりは⾼い) ・ゾーン III:技術⼒が⾼く、施術料⾦も⾼い。カリスマ整体師の経営する施術所 ・ゾーン IV:市場に淘汰されるので存⽴し得ない層 といった具合に各ゾーンを定義できる。
▸ 各ゾーンの市場占有率:最⼤のボリュームゾーンはもちろんゾーン I である。次に多い のがゾーン II。最も希少なのはゾーン III である。(ゾーン IV は事実上存在しえないので この際無視して構わない。)先述の統計が⽰すように整体施術所・健康サロンが全国で約 15 万軒あることから、ゾーン I に 12 万、最も少ないゾーン III には 1,000 軒が、それぞれ存在 すると⾒積もると、ゾーン II にはその残りの約3万軒が存在することになる。ゾーン I は ⼤規模なチェーン展開サロンがその⼤部分を占め、ゾーン II は個⼈経営の施術所もしくは小規模展開グループ、ゾーン III はほぼ個⼈経営規模に絞られるとみてよい。
▸ ターゲッティング:本補助事業ではゾーン II に属する施術所と、それら施術所の顧客層 をメインターゲットとする。したがって、開発すべき商品は、全国の飲⾷店を網羅した「ぐ るなび」のようなものではなく、こだわりの料理店を巡った⾷レポサイトの整体サロン版で ある。周知には、主にネット上でのデジタル・マーケティングを活⽤する。また、現状ゾー ン I に属する施術者グループは、今後ますます⽣き残りが難しくなってくるので、ゾーン II への脱⽪を図ろうとするだろう。彼らもまたターゲットとして取り込める層である。
▸ 既存サービスの分析1.市場規模:現在最⼤規模の施術所・施術者紹介サイトといえば、 リクルート社の運営する「ホットペッパービューティー」である。ホットペッパービューテ ィーの会員数は公称で 2,464 万⼈、施術所やリラクゼーションサロンの掲載店舗数は 4 万 7,830 店にのぼるとのことである。
▸ 既存サービスの分析2.価格帯:ホットペッパービューティーの利⽤価格帯は、掲載料 も代理店も⾮公表なため正確なところはわからないが、提供されるサービスには細かいレ ベル分けがなされており、1店舗あたり、⽉額概ね 5 万円から 60 万円程度の広告料がかか るといわれている。上級の、より⾼額なサービスプランに上げれば上げるほど検索結果の表示順位が上にあがる仕組みになっており、場合によっては 100 万円/⽉を超えることがあるともいわれている。このように、サイト内で上位に表⽰させるためには、利⽤者は多額の 負担を強いられる.もはやホットペッパービューティー内⾃⾝が激戦区になってしまって いるといっても過⾔ではない。Twitter 等で利⽤者の声を拾ってみても、「客は増えたがそ れ以上に客を増やすための経費がかさんでしょうがない。かといって、利⽤をやめると誰も 来なくなるのでやめたくてもやめられない」というのが常態になってしまっているようで ある。また、「もう少し安くて効率のよいサービスがあれば早くそちらに乗り換えたい」と いった内容のツイートも⽬にする。
▸ 既存サービスの分析3.問題点:ホットペッパービューティーにせよ、あるいは、他社の運営する類似サイトであろうと、そこに⾒られる最⼤の問題点は、まず第⼀に伝えるべき最も重要な情報が抜け落ちているということである。世界標準で考えた時、医療従事者を紹介する際に最も重要な情報は、「学位」と「資格」であることは⾔うまでもないが、それが欠けている。どこで学んだのか、誰に師事したのか、何を⾝につけたのか、資格は何で、できることは何なのか、がはっきりしない。海外ではそれらが⽋けた紹介は、少なくとも申請者は⼀度も⽬にしたことはない。顧客が⼀番知りたいはずの、術者は何ができるのか、どういうメカニズムでその技術が機能すると考えているのかといった肝⼼な情報については触れられていないことが多い。(触れられることがあったとしても稀であり、その内容は不⼗分である。)国際的な標準で考えた時、このようなサイトは、問題があるとの烙印を押されかねない。技術内容にこだわる顧客層からしてみれば、⾏ってみたい施術所がどこにあるのかわからず、会ってみたい施術者も⾒つけられないままである。
▸ 補助事業の新規性、差別化・競争⼒強化:当事業所の運営するオンラインサロンでは、入会する施術者の⽅達に対しては、これらすべての情報を開⽰していただく。⼀般に公開する際にはその内容を顧客層(⾃分に合う施術者を探している⼈)に知らせることにも同意していただく。そうすれば、気に⼊った施術者を⾒つけて、消費者はその場ですぐにアプリを使ってアポイントが取れる。また、時流に鑑みて、各施術所のコロナ対策も点数化して明⽰す。これらの⽅針を守れない者の⼊会はお断りする。コンプライアンスを守ること、情報の質を落とさないこと、社会的に責任のある、消費者の望む情報を提供すること、これらはすべて企業が守るべき規範であると思われるが、結局はそれが品質であり、信頼である。
▸ 補助事業の戦略1.セグメント化とターゲッティング:本事業では、いたずらにマスを 追うことはせず、登録者情報の質を⾼め、ターゲットを絞り込むことによって、顧客層からの検索密度をあげるという戦略を取り、市場のニーズに応える。
▸ 補助事業の商品の優位性:必要かつ最重要な情報を過不⾜なく載せることと、多⾔語対 応することである。オンラインサロンに加わるメンバーが、特に顧客層に伝えたいと思って いる純度の⾼い情報だけを掲載し、顧客にはそれらが⾃由に閲覧できるようにする。そこに、ワンクリックで済む予約アプリを投⼊し、施術所と顧客との効率的なマッチングを実現させる。
▸ 補助事業の戦略2.知りたいことを知りたい⼈に:ゾーン II や III を志向する顧客の中には意識の⾼い者が多く、施術の理論等には特に強い興味を⽰し、最新の医学情報をも熟知 しているという傾向が強い。彼らの「知りたい欲求」を満たす情報を厳選して戦略的に提供する。
▸ 補助事業の強み・伝えたいことを伝えたい⼈に:腕に覚えのある施術者であれば、そのことをこそ伝えたいはずである。ポストコロナ・ウィズコロナの時代にあっては、あらゆるタイプの顧客向けの、多店舗展開型施術所ではその存⽴がきびしくなる。むしろ、顧客層をある程度絞り込んだ、独⾃技術に秀でた⼩規模グループや個⼈経営の施術所が市場の主なプレーヤーとなってゆくだろう。そして、そうであれば、⾃分たちの技術の内容を的確に説明できるかできないかが勝負の別れ⽬となってくるはずだ。曖昧にしかできない者から淘汰されてゆく。ところが、既存の巨⼤サイトではそれができない、詳しく説明する余地がない。この補助事業であれば、施術者の伝えたいことを確実に顧客に伝えることができる。
➁ 資⾦調達の⾒込み、想定されるリスク分析
▸ 資⾦調達の⾒込み:2020 年、⽇本政策⾦融公庫より 200 万円、尼崎信⽤⾦庫より 50 万 円の融資を受けている。事業再構築補助⾦に採⽤されたならば、他の⾦融機関も含めて、250 万円程度の更なる融資の積み増しを予定している。不⾜分は⾃⼰資⾦から補う⽤意もある。 (250 万円程度)
▸ 予想されるリスク:サイト閲覧者より、施術者・施術所に対するクレームが⼊る事態が想定される。そのような場合には、当該施術者・施術所に対してヒアリングを⾏い、改善を促す。改善されず、その後もクレームが引き続き発⽣するようであれば、当該施術者・施術所は強制的に退会処分とする。オンラインサロンメンバーからのクレームに対しては、よく話を聞き、オンラインサロン運営の改善に役⽴てる。また、エビデンスに関する問い合わせがあった際には、すでにエビデンスが確⽴されているもの、ただいま研究が⾏われているものに関してはその旨を伝え、関係する論⽂等の必要情報を提供する。未だ確⽴していないものに関しては、関連周辺分野(例:医療⼈類学や医学哲学等)での取り組みと、そこでの研究成果を伝える。コンプライアンスの遵守に関しては、当事業所は、未来⼯学研究所の⼩野直哉研究員からの指導を受けることができる。
➂ 補助事業の価格等
価格は、⼀般会員で⽉額 5 万円、プレミアム会員で⽉額10万円とする。⼀般会員とプレミ アム会員とではサービス内容に差異を設け差別化を図る。⼀⽅、顧客層(⾃分に合う施術者を探している⼈)には、内容を厳選した施術者情報を無料で公開する。これをブラウズ会員とする。ただし、ブラウズ会員にも、サービス利⽤の際には会員登録をするよう促す。さらに、将来的に施術者になりたい⼈、今はまだ開業していないがサロン経営に興味がある⼈、施術業には特に興味はないがサロンや整体のことについてはもっとよく知りたいと思っている⼈、そういった⼈たちに向けて⽉額 1 万円のノービス会員枠を設ける。これらの⼈たちの中で、施術所に⾏きたくない⼈、接触を避けたい者等には、整体理論に基づいた健康体操法を動画配信してもよいだろう。もっと細かく属性に合わせ、ゾーン I からゾーン II に 向けて成⻑したい⼈、ゾーン II からゾーン III へと脱⽪したい⼈、それぞれに合わせ込んだ 商品開発もしていきたい。
➃ 政策的観点からのアピールポイント
▸ グローバルニッチへのチャレンジ:本補助事業は先進的なデジタル技術を駆使した、ニ ッチ分野におけるグローバル市場でのトップを⽬指すものである。
▸ 地域社会への貢献:5 ⽉ 20 ⽇(⽊)、神⼾市内にある上畠寛弘神⼾市議の事務所にて、 上畠市議と川上あさえ芦屋市議に対してセミナーを⾏った。現在神⼾市では「医療産業都市」 事業に取り組んでいるのでぜひ話を聞かせていただきたいとのことであった。整体や、代替医療に対する正しい知識を普及させることによって、地域社会へ貢献することができる。
➀ 新事業の売上利益計画(3 年)
▸ 初年次:デジタル・マーケティングにおいて最も有効な⼿段の⼀つとされている Facebook の広告機能を主に利⽤する。ワンクリック 100 円で⼊札し、⽉間 1,000 アクセス 購⼊すると、この際にかかる広告費⽤は⽉額10万円になる。1,000 アクセスのうち成約率が2パーセントであったとすると⽉間 20 名が成約することになる。成約者の⽐率が有料会員:ブラウズ会員、1:1であったと仮定すると、有料会員の成約数は 10 名/⽉である。 有料会員 10 ⼈のうちに占める割合が、ノービス会員 5 名、⼀般会員4名、プレミアム会員 1 名であったとすると、⾒込まれる初回⽉の売上⾼は 35 万円である。これが 9 ヶ⽉間毎⽉続くとすると、1 年次終了時には、ノービス会員 45 名、⼀般会員 36 名、プレミアム会員 9 名となる。売上⾼は 35 万円/⽉ずつ増えることになるので、⾒込まれる年間売上⾼は、35万円×(1+2+3+4+5+6+7+8+9)となり、1,575 万円/年である。(カッコ内の値は 45)
▸ 2年⽬:2 年⽬も Facebook の広告を同様に続け、成約率も同じ、かつ、1 ⼈の退会者も 出なかったとすると、2 年⽬終了時には、ノービス会員 105 名(60)、⼀般会員 84 名(48)、 プレミアム会員 21 名(12)となる。(カッコ内は対前年⽐増分)売上⾼は 315 万円×12+ 35 万円×78 だから、(3,780 万円+2,730 万円=)6,510 万円/年である。(注: 1+2+3+4+5+6+7+8+9+10+11+12=78)
▸ 3 年⽬:3 年⽬も同様に続け、かつ、1 ⼈の退会者も出なかったと仮定すると、3 年⽬終 了時には、ノービス会員 165 名、⼀般会員 132 名、プレミアム会員 33 名となる。売上⾼は 735 万円×12+35 万円×78 だから、11,550 万円/年となる。
事業再構築補助⾦申請書類 事業計画書 藤守 創 Ph.D. 年次 1 年⽬ 2 年⽬ 3 年⽬ 売上⾼(千円) 15,750 65,100 115,500 付加価値額(千円) 13,550 68,660 124,820▸ 3 年⽬までの評価:⼀般会員 132 名、プレミアム会員 33 名という数字は、先ほど⾒積も ったゾーン II の規模(約3万)のわずか 0.5 パーセントほどでしかないからまだまだ成長の余地は⼤きい。また、顧客層(⾃分に合う施術者を探している⼈)がブラウズするウェブ画⾯上に広告バナーを貼り付けることができれば広告収⼊も得られるであろう。
▸ 実施体制、スケジュール、資⾦調達計画:各該当項⽬参照のこと。
➁ 既存事業の売上利益計画(3 年)
コロナ禍直前(2020 年 1 ⽉及び 2 ⽉)の施術所の売上は⽉間約 35 万円ほどであったが、 下掲の 2000 年当時の記録からもわかるように、申請者が 2009 年にフランスに⾏く以前の 施術所の⽉間売上⾼は平均で 100 万円ほどであったから、もしコロナ禍がなければ今頃は その値に近づいていたのかもしれない。したがって、施術所の売上も渡仏以前の状態、すな わち、⽉間 100 万円を⽬指すのが妥当であると思われる。かつて実現できていた数字なの で決して不可能ではないだろうというのがその根拠である。1年⽬で⽉額 35 万円、2 年⽬ で⽉額 70 万円、3 年⽬で⽉額 100 万円の売上を達成できるよう努⼒する。したがって、3 年⽬終了時点で、新事業の売上⾼ 10%要件はクリアしている⾒込みである。
2000 年申請者施術所⽉間売上表 ⽉ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計 患者 32 43 28 37 38 31 34 26 29 27 28 23 376 売上 960 1290 840 1110 1140 930 1020 780 870 810 840 690 11280 (患者の単位は⼈、売上の単位は千円。施術料 3 万円。初診料は除く。売上平均値は約 94 万円/⽉)➂ 予算配分、事業規模 667 万円(税別)の内訳 (向こう 3 ヶ年)
Facebook 広告出稿費:10 万円/⽉、120 万円/年(初年度 90 万円)、330 万円/3 年 スタジオ改修費:50 万円、機材費:50 万円、動画制作費:50 万円 サイト作製費:50 万円(スタッフの中にできる者がいるので管理は⾃前で⾏う。)
予約アプリケーション開発費:60 万円
翻訳外注費:30 万円、法務顧問:30 万円
クラウドサービス利⽤費:17 万円
➃ 企業全体の売上利益計画
▸ 初年次:売上⾼−経費=1,575 万円−220 万円=1,355 万円
▸ 2 年⽬:新たに⼈員を2名雇⽤する。給与は⼀⼈当たり 24 万円/⽉を⽀給することとす る。売上⾼−経費+⼈件費=6,510 万円−220 万円+48 万円×12=6,866 万円
▸ 3 年⽬:新たに⼈員を2名雇⽤する。給与は⼀⼈当たり 24 万円/⽉を⽀給することとす る。売上⾼−経費+⼈件費=11,550 万円−220 万円+96 万円×12=12,482 万円 よって、事業終了後 3 年で、付加価値額の年率平均 3.0%以上の増加を⾒込むことができる。