1.補助事業の具体的取組み内容

➀ 申請者略歴

▸ 申請者略歴:1988 年早稲⽥⼤学第⼀⽂学部フランス⽂学科卒業。パリ第1⼤学ソルボンヌ哲学部博⼠課程修了。哲学博⼠。神⼾⼤学⼤学院医学研究科博⼠課程単位取得退学。関⻄医療学園専⾨学校鍼灸科卒業。鍼灸師資格取得。専攻は、医学哲学、フランス科学認識論、 東アジア医学史。パリ⼤学科学史科学哲学研究所研究員、ハーバード⼤学東アジア⾔語⽂明 研究科研究員、アムステルダム⼤学哲学部助教等を勤める。⼤学卒業後、整体施術所を経営 する傍ら学究⽣活に⼊る。2009 年よりは、主に海外(フランス、アメリカ、オランダ等) を拠点として研究活動を続けてきたが、2018 年秋帰国。翌年より⾃⾝の施術所を芦屋市内 にて再開した。主著に、『「揉む医療」の探求』―⽇本的⾝体とは何か(藤守創著、2020 年 ⻘灯社刊)がある。

▸ 事業所概要:戦前(昭和 10 年頃)申請者の祖⽗に当たる⼈物が開設した施術所をルーツとする整体施術所である。申請者は、⼤学卒業後より、整体技術の習得と研究に専⼼するとともに、施術所の経営(東京、⼤阪)に携わってきた。

➁ 現在の事業の状況

▸ 施術所の現状:親⼦三代にわたる施術所を経営しており、豊富な経験と、⻑年に亘って 蓄積されたデータ、それらに裏打ちされた理論と技術がある。また、研究者としての経歴と、 その成果としての⾼い学識も有する。その⼀⽅で、収益の柱が現状のように施術のみでは、 今回のコロナ禍のような不測の事態に巻き込まれた場合には売上の落ち込みが激しく回復も容易ではない。今、⽇本型施術は世界で受け⼊れられつつあり、そこには⼤きなビジネス チャンスがある。効率的に情報を発信する専⾨メディアを構築して成⻑市場に参⼊し、現状を打破したい。

▸ 事業再構築の必要性・緊急性:約 10 年に及んだ在外研究にひとまず区切りをつけて 2018 年に帰国。翌2019年より施術所を再開したが、コロナ禍の直撃を受けて極端に収益が悪化した。緊急事態宣⾔に伴う飲⾷店の時短営業や不要不急の外出・移動の⾃粛等による影響も あって、現在もなお引き続き事業は低迷状態にあり、危機的状況を脱していない。

➂ 補助事業の具体的内容

(1):コロナ以前の整体市場

▸ 増え続ける整体院:近年の整体施術所・健康サロン等の新規開業率、及び施術者の数は ⼤変な勢いで伸びている。厚⽣労働省の統計によると、平成 28 年現在、マッサージ院、鍼 灸院、接⾻院、整⾻院、整体院等の数は全国で計 13 万 6,460 ヶ所にのぼると報告されてい る。(平成 28 年衛⽣⾏政報告例、就業医療関係者の概況。厚⽣労働省調べ)この数は、全国 に広がるコンビニエンスストアの店舗数(平成 30 年 11 ⽉現在で 5 万 5,695 店、⽇本フラ ンチャイズチェーン協会調べ)の⼆倍以上である。また NTT タウンページの調べによると、 接⾻院、整体院の登録数は、平成 16 年には 2 万 7,771 店だったものが、平成 26 年には 4 万 5,572 店へと、こちらも10年間で倍近い伸びを⾒せている。(NTTタウンページニュースリリース、https://www.ntt-tp.co.jp/release/?p=8285)

▸ 肥⼤化する整体マーケット:この状態が続けば施術所及び施術者数は今後より⼀層加速 度を増しながら増加してゆくことになる。これは、マーケットが急速に肥⼤化していることを⽰している。

▸ パリで開業された整体施術所:申請者がフランスで研究⽣活を送っていた当時、パリの⾼級住宅街に⽇本の整体を掲げる施術所が開業した。地元⺠からは好評をもって迎えられ、 フランスを代表する有⼒紙の⼀つであるル・モンド紙にも記事として取り上げられた。

▸ 世界に広がる整体:「Seitai New York」や「Seitai Paris」といった⽤語で検索をかけてみ ると英語やフランス語の数多くの情報がヒットする。

▸ 整体療法の海外への伝搬:近年の施術所数の増加ぶりは、必ずしも⽇本国内だけの特殊 事情によるものではない世界的な傾向の⼀端である。

➃ 補助事業の具体的内容

(2):ポストコロナ・ウィズコロナ時代の施術所のあり⽅

▸ ⼤きなビジネスチャンス:前項で述べたように、市場は今急速に拡⼤しつつあり、さらには、それが⽇本国内だけではなく海外へも広がろうとしている。これはもちろん⼤きなビ ジネスチャンスである。しかしながら、⼈的な接触を前提としている職業である以上、ポス トコロナ・ウィズコロナの時代においては、いくら旺盛な需要があったとしてもそれが即消 費⾏動には結びつきづらくなってゆくであろうことは容易に想像がつく。

▸ COVID19 の影響:直近の事象なのでまだ各種統計にはその数字が反映されていないが、 コロナ禍が影響して倒産に追い込まれるサロンが出てきているという報道はもうすでにな されている。それによると、潰れているのは主に多店舗展開型の施術所・健康サロンである。 本来であれば有利に働くはずのスケールメリットが特殊な状況下ではかえって⾜枷になっ てしまっていると考えられる。新型コロナの特性から⾒て、⼤規模ビジネスモデルからまず 淘汰されてゆくのは、やむをえないことだといえるだろう。今後コロナ禍が⻑引き、多店舗 展開型施術所・健康サロンの倒産が相次ぐような事態が起れば、そこからあぶれた⼈材の多 くは個⼈で開業していかざるを得なくなる。これらの個⼈開業者たちは⾃分たちが生き残ってゆくための情報と、彼ら⾃⾝の施術所情報の発信、および顧客獲得のための⼿段を必ず 欲するようになるはずである。

▸ 従来からの市場の問題点、申請者の強み:整体療法、健康サロン等に関しては、もともと よく知られた、内容的にも⾼度な専⾨誌等といえるようなものはなく、良質な情報が⼀般国 ⺠に⼗分によく提供されていたとはいえない。また、個々の分野に関してはそれぞれに専⾨ 家がいるが、全体を⾒渡せる、実践経験もあり、施術所の経営に通じていてかつ学術的にも⼗分な成果を上げている専⾨家となると申請者以外にはほとんどいない。

▸ 差別化・競争⼒強化:このような状態をこのままにして放置しておくと、現在の事態が落ち着いてきた時、コロナ以前と同様、個々の施術所・施術者たちは引き続き激しい競争に巻き込まれることになる。その⼀⽅で顧客は、⽟⽯混淆の情報に振り回されて右往左往することとなる。延いては業界全体の健全な発展が阻害される。ここに、今までにはなかった専⾨的なメディアを⽴ち上げる必要がある。

▸ 取組み⽅法・仕組み:情報を⼀元的に管理できるようなウェブサイト、オンラインサロンを開設し、それらを独⾃開発の予約アプリによって有機的に関連づける。(シナジー効果) 潜在的な海外の顧客にもアピールできるように多⾔語対応化する。(英語、スペイン語、中 国語等)

▸ COVID19 今後の⾒通し:⽶国国⽴感染症研究所所⻑アンソニー・ファウチ博⼠の⾔によると、「ワクチン接種が進めば集団免疫が確⽴する」とのことである。しかし、ワクチン接種が8割⽅終了したはずの国の中のいくつかでは、にもかかわらず感染者数が再び急上昇しているとの報道もある。予断は許されず、最悪の事態に備える必要がある。

➄ 補助事業の具体的内容

(3):提供するサービスと実施体制

▸ 主要商品1.オンラインサロンの開設:既存のプラットフォーム(Facebook、Line、 YouTube、Instagram 等)を利⽤してウェブ上にクローズドなサロンを開設する。サロンメンバーである施術所・施術者からは⾃由に情報を発信していただく。ただし、情報の質に関 しては、当事業所で⼀元的に管理する。その⽅針に賛同できない者は⼊会を認めない。

▸ 主要商品

2.施術者紹介サイトの開設:

顧客層(施術サービス受容者)に対しては、情報 を選別した上で、彼らが⾃由に閲覧できる施術者情報のアーカイブをウェブ上に構築する。

「このサイトに⾏けば間違いのない情報が得られる」というような、健康サロンに特化した ウェブ上のクオリティー・ペーパーを⽬指す。オンラインサロンと施術者紹介サイトが有機 的に絡み合い、そこに予約アプリケーションが加わることによって効果が最⼤化されるよ うな運営体制を整えて競争⼒を⾼める。なお、当事業所では過去にオンラインサロン、ウェ ブサイト、アプリケーション開発を営んだ経験はなく、そのため、新たに配信機材等を導⼊ し、既存施設の⼀部を撤去・改修して配信スタジオを設置する必要があり、その費⽤がかか る。また、整体施術と、これらのサービスとでは、互いに異なるサービスであって、それら の性能や効能を定量的に⽐較することはできない。よって、この補助事業は、製造⽅法等の新規性要件、商品等の新規性要件、設備撤去要件等を満たしていると考える。また、これらのサービスを始めたことによって今の施術所の患者数が減るとは考えにくく、むしろ施術所がより多くの⼈に認知されることによって患者数は増えることが予想される。

▸ 主要商品3.予約アプリケーションの開発:施術者側には、新規顧客獲得・リピーター数増加に資するような、また、顧客層には、適切な施術所・施術者選びに資するような、⽶国の配⾞サービスアプリケーションの Uber に範を取ったワンクリックで済ませられる予約アプリケーションの開発に着⼿する。

▸ 関連商品1.動画の配信、編集サービス:整体施術所、健康サロン、及び施術者の紹介動 画の制作、編集、配信等を⾏う。YouTube 上に当事業所独⾃のチャンネルを開設し、施術所及び施術者よりの投稿を管理・編集し、コンプライアンスを考慮した上でアップロードす る。動画作成技術のないオンラインサロンメンバーに対しては、動画作成及び編集のサービ スを請け負う。制作・編集は外注に出す。発注先は、神⼾シティ・オフィス、ジ・アザーハーフ(神⼾市中央区琴ノ緒町、代表:伊⾹桃⼦)を予定している。費⽤は概ね 10 万円/1 編 程度を予定している。(編集:6 万 5,000 円、収録:3 万 5,000 円)実費は利⽤者より都度 徴収する。海外向けにも発信したい利⽤者に対しては、翻訳、ローカライズのサービスも合わせて提供する。

▸ 関連商品2.セミナーの開催:オンラインサロンメンバーに向けてセミナーを開催する。 申請者がこれまでの研究によって得た知⾒に基づき、時には有識者の講師も交えたセミナ ーを開催する。なお、COVID19 を考慮してセミナーは可能な限りオンライン上で⾏うよう にしたい(Zoom 等を利⽤)。セミナーで取り上げる課題としては、「医学的エビデンス」「代替医療のエビデンス」「海外に広がる整体」「整体の歴史と理論」「ポストコロナ時代 の施術所のあり⽅」等を予定している。